5)ゴム成型品膨れ部の中から(その2)

■状況
ゴム加工製造ラインでゴム表面に膨れが発生する不具合が生じた。
この部分を切り開いたところ、膨れ部内に淡茶色の異物(0.42×0.75mm)が確認された。

上写真は、ゴム中に混入していた異物をカッターで切り開いたSEM(走査電子顕微鏡)写真です。
この写真から、異物表面は、非常に滑らかな形状をしていることが観察された。
この部分の定性分析した結果を下記に示します。

EPMAによる定性分析(元素分析)結果

存在元素 正常部(wt%) 異物部 壁塗料片
C 94.252 38.067 46.845
Zn 3.338 1.197 0
S 2.107 2.051 2.630
O 0.302 9.812 11.675
Ti 0 42.663 35.841
Fe 0 4.849 0.399
Al 0 0.529 0.757
その他 0 0.832 1.853

正常部;
C (炭素→ゴム成分中)
Zn(亜鉛→亜鉛華)
S (硫黄→加硫剤)
O (酸素→ZnO)
異物部;
Ti(チタン),C,O,Fe(鉄),S,Zn等。
異物部には、Ti,C,Fe,O等を多く含む。
壁塗料片は、工場内の壁剥離部をサンプリングして分析した。

■面分析結果
定性分析で得られた結果から、下記元素に絞ってマッピング分析を試みた。

EPMAによる面分析(元素分析)結果

水色;(Ti+O+Fe)→ 異物の形状と一致。
(Ti→塗料中の添加剤 Fe→着色無機顔料成分と推定)

■分析結果
・異物の断面を実体顕微鏡で観察した結果、2~3層の積層になっており、異物とゴム間に空洞が生じていた。
・EPMA分析結果から、工場内壁面の塗膜片が落下混入と推定。(工場内塗膜分析結果と非常に類似していた。)
・空洞は、加硫時の熱で、塗膜が分解し発生したと推定。

■今後の対応
塗膜落下の可能性がある場所(天井、壁等にビニールシート等で養生し、原料や投入口からの混入を防ぐ方法の対策が必要である。